そもそも、今回Londonに来ようと決め、標準を合わせたのはBLURの復活ライブでした。それなのに、同時期にAC/DC、NINE INCH NAILS等もEnglandに来てくれて、またも運の良さを発揮。
そして、こちらも本当に奇跡的。5月に予定されていたツアーが延期になり、僕がLondonにいるこの7月に予定が組み直された、MORRISSEY。
MORRISSEYのライブを観るのは丁度1年ぶり。前回はWireless London 2009のヘッドライナーとしてHyde Parkで彼のライブを観ました。今回の会場は、Hyde Parkよりも遥かに小さいBrixton Academy。小さいとはいえ、キャパシティーは5000人もありますが。
PIXIES、SYSTEM OF A DOWN、SIGUR ROS、TOOL、THE JESUS AND MARY CHAIN、SEX PISTOLS、IAN BROWN等、ここBrixton Academyでは実に多くのライブを観ました。
Londonの中でも、治安の悪さで有名なBrixton。今日はBrixtonへ向かう地下鉄Victoria Lineが動いていなかったので、2番目に近いNorthern LineのStockwell駅から歩いていく事に。久し振りにこちらの方へ来ましたが、駅を降りて会場に着くまでの道、ギャングはあちらこちらでたまっているわ、すれ違うのはフーディーばかりだわで相変わらずとても怖い。
LondonのThames川以南は危険な場所が多いと言われます。僕が住んでいた家のあるElephant And Castle。僕の通った大学があるNew Cross。僕のバンドが使っていたスタジオがあるPeckham。これらはすべて、凶悪な地区として有名です。よく4年間無事でいられたと今になって思います。
さて、懐かしいBrixton Academyの中へと入って行きます。この不況の所為か運営する会社がCarlingからO2へと変わりましたが、だからと言って特に何も変わっていません。ステージ上にはスクリーン。ELVIS PRESLEY、THE VELVET UNDERGROUND、NEW YORK DOLLS等、Morrisseyが敬愛するミュージシャン達の映像が映し出されています。
開演時間、暗転と共にスクリーンが撤去されます。そして、暗いSEの中、静かに現れるMorrissey、そしてTHE LADSと呼ばれるバックバンドの面々。
ライブはいきなり、THE SMITHSの「This Charming Man」から始まりました。嬉しかった反面、このHeavy Metalの様な整合感のある、そつの無い演奏に、THE SMITHSの頃からのファンにしてみれば違和感を覚えることでしょう。僕も感じるくらいですから。
Morrisseyは病み上がりである事を微塵も感じさせない、いつものエモーショナルな歌声を聞かせていました。攻撃的な「I Just Want To See The Boy Happy」、ニューアルバム「Years Of Refusal」から「Black Cloud」と続きます。
そして、早くも「How Soon Is Now?」のセンセーショナルなギターリフが始まり、信者の様なオーディエンスの歓声に迎えられ、歌い出すMorrissey。前回のライブでは、ステージ上に仰向けに倒れこんだMorrisseyにスポットライトが当たり、イントロの後に起き上がるという演出を観せていました。今回は、歌い終えると同時にドラムセットの前に倒れこむMorrissey。
再びニューアルバムから「I'm Throwing My Arms Around Paris」。今の彼のライブでは、2004年以降のアルバムから定番曲として定着した曲が多くあります。
僕が日本を離れLondonに来た年、2004年は、Englandが国を挙げてMORRISSEYの復活祭を行っていた年でした。U.K.のバンドも、U.S.から来たバンドも、一様にMORRISSEYに賛辞を述べ、THE LIBERTINESやFRANZ FERDINANDがチャートを席捲した事さえMORRISSEYの帰還が国の音楽界を活性化させた賜であると報道がなされていました。
そして、「Ask」です。今夜は序盤から、かなりアグレッシヴなライブです。
「When Last I Spoke To Carol」の後は、「Mama Lay Softly On The Riverbed」、「You Just Haven't Earned It Yet, Baby」、「Moon Over The Kentucky」とメロウな路線に。静かに聞き入る事の多かったオーディエンスですが、「Irish Heart, English Blood」で再び盛り上がります。
前回と違い、ステージの近くでライブが観られて気が付いたのですが、曲が終わったと思ったらすぐさまギターを変えたり、ポジションを移動したり、THE LADSのセットチェンジが非常に機敏。鍛えられているんだなと思いました。
メンバー紹介、1人ずつTHE LADSの面々を紹介した後、 ”そして僕は個性も価値も名前も無い存在” といつもの様に自嘲するMorrissey。
そして、ここからがサービスが利き過ぎて怖いくらいの展開に。「Girlfriend In A Coma」、「Because Of My Poor Education」と、次々にオーディエンスを喜ばせる曲が演奏されます。
”僕が幸せそうに見えるかい。何故なら、実際に幸せだからね。” そう言って始まった、「I Keep Mine Hidden」。世界中のファンから一心に愛され続け、Morrisseyも今年で50歳。
曲が終わっても騒ぎ続けている観客に対し、 ”そこの彼が何か言いたがっている様だ。マイクを渡してみようか。” とオーディエンスに問いかけるMorrissey。オーディエンスが歓声で応えると、 ”残念。僕は多数の意見に従った事は無いんだ。” と皮肉にあしらい「The World Is Full Of Crashing Bores」へ。
そして、間髪入れずに始まったTHE SMITHSの「Some Girls Are Bigger Than Others」。ライブでは初めて聴けたのですごく嬉しかったのですが、やはりオリジナルの印象とは随分違います。かと言って、Johnny Marrの方も5年前にライブで観たんですが、彼もまた今では器用になり過ぎている感がありますからね。
そして、次第に暗く、控えめなサウンドが「Life Is A Pigsty」、「The Loop」へと繋がっていきます。僕はやはり、こういう感じが好きです。どんな感じでも好きですけれども。根本的にMorrisseyというミステリアスな人が好きな訳ですから。
そんな事を考えていたら、再び華やかな「I'm O.K. By Myself」が始まりました。そして、バンドが演奏を終えないうちにステージを後にするMorrissey。本編はこれで終了。
アンコールに応えて再び現れ、オーディエンスに感謝を述べるMorrissey。演奏し始めた曲は「First Of The Gang To Die」。照明を向けられ、Morrisseyと共に合唱し、これ以上無いくらいの笑顔をステージに向けるオーディエンス。アンコールに似合う曲は他にあるのではと思いましたが、いざこうして始まってみるとこの曲がラストでも申し分無い様な気がしてきました。
歌い終わり、いつもの様にシャツを脱ぎ、オーディエンスに向かって投げ、上半身裸でステージを去って行くMorrissey。素敵です。
思い返せば、NEW ORDER、HAPPY MONDAYS、IAN BROWN、OASISとManchester出身のバンドが好きなのに、彼等のライブを観たのは全てLondonでの事。いつかはManchesterで観てみたいと思いつつ、Manchesterから来たバンドをLondonで迎えるのが僕らしい、とも思ってしまいます。
音楽を聴き始めた10代の頃、Heavy Metalを教えてくれる人がいました。Punk Rockを教えてくれる人もいました。90年代以降の音楽は言わずもがな。しかし、THE SMITHSやJOY DIVISIONの様な音楽を教えてくれる人は、周りに誰1人としていませんでした。この国に住んで、曇り空の下、古い街並に生活してみて、初めて理解出来た様なものなんです。
狂信的なMORRISSEYのファンが、U.K.にも日本にも多くいます。僕はそうなるより先に、未だに誰かにこういう音楽について教えてもらいたいという気持ちを持ち続けています。
愛情が自分の中で屈折し、独り歩きを始めてしまうそうで、怖いんです。



Setlist:
01. This Charming Man
02. I Just Want To See The Boy Happy
03. Black Cloud
04. How Soon Is Now?
05. I'm Throwing My Arms Around Paris
06. Ask
07. When Last I Spoke To Carol
08. Mama Lay Softly On The Riverbed
09. You Just Haven't Earned It Yet, Baby
10. Moon Over The Kentucky
11. Irish Blood, English Heart
12. Girlfriend In A Coma
13. Because Of My Poor Education
14. I Keep Mine Hidden
15. The World Is Full Of Crashing Bores
16. Some Girls Are Bigger Than Others
17. Life Is A Pigsty
18. The Loop
19. I'm O.K. By Myself
Encore 1
20. First Of The Gang To Die