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2007 September 9
近頃、過去活躍したバンドの再結成が頻発して新旧のファンを喜ばせています。しかし、そんな中で、不可解な再結成も多々見受けられます。
Jim Morrison抜きのTHE DOORS、Layne Staley抜きのALICE IN CHAINS、Paul Weller抜きのTHE JAM・・・。ここまで来るともう意味が分かりません。
また、主要メンバーがある程度揃っていたとしても、過去の栄光を汚す事になりかねません。裏では信じられない額のお金が動いている訳で、当人達はそんな事、気にしていないのかも知れませんが。
今夜はそんな再結成ブームの中に於いても、今この時代にという意味付けよりも何よりも、ただでさえそこに揃って立っている事がもう奇跡そのもの、ましてやそんな彼等の紡ぎ出す音と言ったら、そんなバンドのライブを観に行きました。
THE POLICE。解散から23年たった今年、まさかの再結成。メンバー達はもう結構な歳です。しかし、同じく ”歴史に名を刻んだ3ピースバンド” であるCREAMと比較しても、若さこそ成せた業、というものはこのバンドには無い気がします。簡単に言えば、CREAMなんていうバンドは歳を取ってしまったら再現不可能な訳で、そこのところこのTHE POLICEは若さに関係無い普遍的な音楽を当時からしていた、という事です。
ですから、このバンドの再結成に関しては、非常に肯定的な意見を持つ事が出来ました。
会場は、Twickenham Stadium。5万人収容、Londonの中ではWembley Stadiumに次ぐ広い会場です。一昨年はU2、昨年はTHE ROLLING STONESと、毎年1回はこの会場に来ていました。
THE POLICEも母が好きだったバンドの1つで、Stingというミュージシャンが如何に誠実な人なのか、という話をよく聞かされました。
高校教師を辞め、妻子を連れてLondonへ向かい、ミュージシャンになる決意をした当時26歳のSting。無謀というか家庭を顧みない駄目男というか、もしあのままこの男が心変わりを起こさずに高校教師を続けていたら、もう10年ぐらい余計にRock、Popsは突破口を見つけられずに当ても無く飽和状態を彷徨う羽目になった事でしょう。
時は1977年。右を向けばPunk Rock、左を向けばHeavy Metalという時勢に、デビューしたその時から彼等の居場所は何処にもありませんでした。
結局、居場所が見当たらなければ、自分達が新しい動きの中心となれば良いだけの事だと気付いた彼等に、音楽界はリセットを掛けられる羽目に。
彼等は確かに、当時世界で一番危ないバンドでした。
随分日も短くなりました。こういうスタジアムの会場では、開演時間に日没が間に合わず何だか白けた演出でライブが始まってしまうのが残念ですが、今回は大丈夫。BOB MARLEYの「Get Up, Stand Up」がかかり始め、暗転。遂に、始まります。
暗いステージの上で、人影が動いています。そして、スポットライトに照らされ、Andy Summersの姿が見えました。
粒の立ったクランチのギターが刻む、「Message In A Bottle」のイントロ。時が止まりました。
3年前、Royal Albert HallでSTINGを観た事がありました。以前FOO FIGHTERSのライブのレヴューで ”宇宙飛行士が地球に降り立った後” の話をしたと思いますが、Stingもまた然り。Rock界のカリスマだった彼はTHE POLICEの解散と共に地上に降り立ち、哀愁のPopsメーカーへと姿を変えたのでした。ですから、彼のライブを観に行って、彼はRockでは無くなった、などと言う事は全く的を得ていない事なのです。
しかし、今夜のStingはまるで別人でした。こんなにかっこいい人でしたっけ、彼。
今夜のStingは、3年前に観たストリングスやダンサーを後ろに従えたStingでは無く、3ピースバンドのフロントを務めるStingです。余計なものは何も持たない、歌とベースだけで勝負を挑む裸のミュージシャン。再結成CREAMでのEric Claptonも、今夜のStingくらい昔の勘を取り戻してくれたら良かったのに。
2人の後ろには青いドラムセットに囲まれたStewart Copeland。スタジアムとあってステージセットも結構なものですが、照明は至ってシンプル。それはまるで、彼等がNew YorkのC.B.G.B.でライブをしていた頃を髣髴とさせるかの様に。
不思議な感覚が僕を包みます。例えば、同じ再結成でもPIXIESやRAGE AGAINST THE MACHINEを観た時の感想というのは ”これがあの” というものでしたが、QUEENやASIAを観た時には ”久し振り” という様な、デジャヴが起こるのです。
これだけは、遺伝かな、と思うんですよ。
THE POLICE健在を宣言したセンセーショナルなオープニングから、「Synchronicity II」へ。するといきなり、それまでシンプルだった照明が青、黄、赤の3色のランダムな模様を描き出します。もちろんそれは、名盤「Synchronicity」のアルバムジャケットを連想させるもの。
手短な挨拶をオーディエンスに告げた後、雰囲気は打って変わってReggae調の「Walking On The Moon」が始まりました。Stingの透き通るような高音は、今も変わりませんね。
「Driven To Tears」での遊びから曲の進行に戻っていくJazzの様な演奏、たまりません。よくもこんなに息が合うものですね。あれが阿吽の呼吸というものなのでしょうか。他の2人なんてうわの空、1人ずつ別々のステージに立っているんだと言わんばかりの井出達で、あの演奏ですからね。
こうして次々と、今再び往年の名曲達に命が注入されていきます。
Sting、Stewartは共に55歳。Andyは何と64歳。見た目も若いし、ステージ上で動き回る姿からもとてもそんな歳には見えません。特にStewartのドラムと言ったらもう言葉を失う程の素晴らしさ。これまでCarl Palmer、Dennis Chambers、Danny Carey等世界の名立たるドラマー達を観てきましたが、Stewartも今日から、僕の中の忘れられないドラマーの1人です。
「Every Little Thing She Does Is Magic」では「Ghost In The Machine」のアルバムジャケットが映し出されます。THE POLICEと言うと、何かと「Synchronicity」が取り立たされる感がありますが、僕はこの「Ghost In The Machine」も彼等の違う側面が現われていて好きですね。ジャケットのアートワークと相成って、キャッチーながらも整合感のあるサウンドが内省的な世界観を構成するこのアルバム。3ピースバンドマニアとして知られる矢野顕子も、このアルバムをフェイバリットに挙げていました。
Stewartが要塞の様に並べられたパーカッションを動き回りながら演奏する「Wrapped Around Your Finger」、人種問題を提起させる映像と共に演奏される「Invisible Sun」等、落ち着いた曲が続きます。「Walking In Your Footsteps」を綺麗に歌い上げるSting。THE POLICEというバンドは、他の有名な3ピースバンドと同じく、すんでのところで演奏が成り立っているバンドだと思います。それは他の3ピースバンドに見受けられる様な、一音でも抜けたら演奏が崩壊するという危機が成す化学反応とかでは無くて、各々の受け持つパートの位置関係が、それこそ太陽系で惑星直列が起こる程の奇跡に近い確率でしか起こりえなかった、偶然の巡り合わせという危うい成り立ち。
「Can’t Stand Losing You」で再び徐々に盛り上がり、そして遂に解禁された、「Roxanne」。何でしょう。もう体中の力が抜けてしまいました。
伝説が、歴史が、目の前で音を立てて動いていました。
やつれた後、気が着いたら3人はステージを去っていました。
何とか気を取り戻したら、もうアンコール。「King Of Pain」でたちどころに連れ込まれ、「So Lonely」で心を奪われ、そして、「Every Breath You Take」で付きまとわれてと立て続けに。ステージ上には3人だけ。3人だけで、よくもここまで無限に広がるかの様な可能性を提示してくれたものです。彼等のデビューから30年経った今でも、まだその恩恵を受ける余地は残っていそうな気がします。
シンクロニシティー。共時性。
僕が何年も探しているもの。何年も、その意味を理解しようと努めているもの。
違う惑星に生まれたのかも。本人達をしてそう言わしめる程、性格の噛合わない3人がこれ程の音楽を遺し、何十年間も世界中で愛され続けている。
2度目のアンコールは、何と「Next To You」。1stアルバム「Outlandos D’amour」のオープニング曲。この曲で彼等は、またSEX PISTOLSみたいなPunk Rockが来たと思い込まれ、デビュー早々ラジオで放送禁止の扱いに。何から何まで、センセーショナルな話題に事欠かないバンドでした。
伝説は、伝説が伝説になった後に生まれた僕にも、伝説を観せてくれるチャンスをくれました。
伝説が、伝説へと帰っていきます。
その吐息、足跡、彼等の全てを、目に刻みつけて。
ありがとう。さようなら。
Setlist:
01. Message In A Bottle
02. Synchronicity II
03. Walking On The Moon
04. Voices Inside My Head
05. When The World Is Running Down
06. Don’t Stand So Close To Me
07. Driven To Tears
08. Truth Hits Everybody
09. Hole In My Life
10. Every Little Thing She Does Is Magic
11. Wrapped Around Your Finger
12. De Do Do Do De Da Da Da
13. Invisible Sun
14. Walking In Your Footsteps
15. Can’t Stand Losing You
16. Roxanne
Encore 1
17. King Of Pain
18. So Lonely
19. Every Breath You Take
Encore 2
20. Next To You
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とても丁寧な記事を書かれていらっしゃるのを見て改めてライブの感動を思い出しました。私は音楽を語る言葉を未だ探し中で、なかなか自分でも納得できる文章が書けないのですがYoshitakaさんのような方の文章を読んで自分でもうまく表現できるようになればいいなぁと思いました。
ライヴレポのLondon編、楽しみにしていました。
私も"Ghostin The Machine"は"Synchronicity"以上に好きなアルバムですよ。
その後のStingのソロアルバム”Soul Cage""Ten Summoner's Tales"なんかにも近い音楽性が感じられるアルバムだと思います。
ジャケ絵もシンプルで好きです。
ちなみにスチュワートが東京公演ではこのジャケ絵のTシャツを着ていました。
その他のアーカイヴ・シリーズもまた楽しみにしています!(←プレッシャー??)
こちらこそトラックバックありがとうございます。
几帳面な性格なもので、なかなか気軽に感想というものが書けないんです。もう少しまとめてから、とも考えますが、それはそれで時間を取られてしまうしで・・・。たかがブログにそんな考えを巡らせても仕方が無いのですがね。
音楽という媒体を文章で伝えるというのは本当、難しい作業ですね。やはりすごいもの程、観てもらわないと分かりませんね。
これからももし宜しければ気軽に覗きに来てくださいね。
>Rayさん
トラックバックありがとうございます。
Andy Summersは「Ghost In The Machine」は発表当時あまり好きではなかったそうですね。確かに彼の持ち味の1つであるソリッドなギターはあまり生かされていませんが、このアルバムに収められている珠玉の名曲群はJazzやReggae等3人のバックグラウンドに裏打ちされたまさに職人の業というものでしょうね。
このアルバムのジャケットのTシャツ、僕も欲しいです。何処かで買えないかな。
ライブレポはネタと下書きだけは豊富にあるので、いろいろと載せていくつもりですのでよろしくお願いします。