MY BLOODY VALENTINEの活動期間は、僕達の世代が音楽に興味を持つ遥か前の話。それでもこのバンドはNIRVANAと並ぶくらい、今の若いリスナー達も必ずと言っていい程通る道。実際には触れられなかった割には、馴染みのある様に語られるバンドです。それ程、日本人の感性がShoegazerという音楽にシンパシーを寄せたという事なのでしょうか。
久し振り、と言ってもほんの8ヶ月振りですが、Chalk FarmにあるRoundhouseが今夜の会場。ここは数あるLondonの歴史的なライブ会場の中でも、是非見てもらいたい場所です。古くはTHE JIMI HENDRIX EXPERIENCEやTHE DOORSがライブを行った会場として有名で、建物そのものは改築されて新しいのですが、中に入るとプラネタリウムの様に完全に円形のホールになっていて、剥き出しの天井の梁と暖かな照明がかもし出す雰囲気が、何とも言えず良いのです。
今夜のライブには、実体の知れないものに接近する怖さがありました。
今夜は会場に入ると、入り口で係員達が何かを配っていました。耳栓でした。どうやらそういうことみたいです。あんな笑顔で渡されても、怖いだけですよ。
会場の照明が消されるまで、本当にMY BLOODY VALENTINEが観られるという実感がありませんでした。騙されてここにいるのでは、とさえ。
やがて暗くなり、1人、また1人と現れる、メンバー達。
「I Only Said」が始まりました。どうやら目の前にいる4人は、本当にMY BLOODY VALENTINEの様です。
いざライブが始まってみても感動よりも前に、目の前で演奏しているバンドの姿が信じられないというか、上手く理解出来ないでいました。昨年、同じく再結成したTHE JESUS AND MARY CHAINを観た時にも感じたのですが、頭が ”そんな筈は無い” と否定しているのかも知れません。
バック一面のスクリーンに現われる映像と一緒になって、脳に入り込む音。耳栓が配られただけあって、それは凄まじい音量。MOGWAIやDINOSAUR JR.のライブもかなりの音量でしたが、こちらも凄い。
そうこうしているうちに、「When You Sleep」、そして「(When You Wake) You’re Still In A Dream」とドラマ仕立てに曲が繋がります。憎い演出。
丁度僕の目の前にはKevin Shields。かろうじて、彼は過去1度、PATTI SMITHのライブでシークレットゲストとして登場した時に観た事があります。
Kevinは狂人だと、事ある毎に人は言いたがります。表情というものが殆ど無いこの男の顔は、確かに怖い。正面を向いた目。決してそらさず、空中の一点を静かに見据えています。オーディエンスなんか見えていないのでしょう。もし目を合わせたら、彼の目線が頭の後ろに貫通してしまいそう。
中央には激しく動くリズム隊の2人、両サイドには直立不動のギターヴォーカルの2人。このコントラストの妙が、ステージを1つの生物の様に見せます。
Kevinがアコースティックギターを持ち、始める「Lose My Breath」。青い照明の向こう、幻覚の様にステージに映る、Bilinda Butcherの姿。そして、このコーラス。ただ、美しい。
「Come In Alone」、そして、「Only Shallow」。1stアルバム「Isn’t Anything」と2ndアルバム「Loveless」の曲が織り交ぜられて、と言うのは当たり前ですが、こうして聴くと「Isn’t Anything」はShoegazer、「Loveless」はDream Popと明確に役割分担がされているような気がしました。今ではShoegazerと言えば「Loveless」というのが世界共通ですが、今聴くによりプリミティヴなShoegazerはやはり「Isn’t Anything」の方であったのかなと。
Kevinは曲毎にギターを取り替えますが、全てFender JaguarかFender Jazzmaster。恐らく足元には、幾つものエフェクターが複雑に繋がっているのでしょう。Shoegazer (靴を眺める人) の語源は、ここから来ています。
それにしても美しい。悲しいまでに美しいこの光景は、何処かで観た覚えがありました。
KevinとBilinda。元恋人同士であった2人が、今またステージの両脇に立って一緒に演奏しています。目も合わせず、合図も無しに、見事なまでに同期した演奏。そんな2人の最後を飾ったアルバムのタイトルが「Loveless」だなんて、あまりに悲し過ぎます。
Kevinは天才であるが故、己を痛めつけるかの如く完璧を求め続けました。「Loveless」の製作期間は2年。19箇所ものレコーディングスタジオを使用し、次から次へとエンジニアを雇ってはクビに。レコーディングにかかった費用は5億円を超え、遂に彼はレーベルから追い出されてしまいました。
悲し過ぎる過去との再会。今回の復活がどの様な意志が働いて、またはどの様なタイミングを見計らって実行に移されたかは分かりませんが、本人達の心境は、それこそ想像するに余ります。
「Nothing Much To Lose」では、Debbie GoogeとColm O Closolgの壮絶なリズムセッションが。それに覆い被さる様に、KevinとBilindaのギターの音が空中に散っていきます。
4人とも、冷凍保存されていたかの様に全く容姿が変わっていません。ましてやライブの内容ももちろんの事。その威力、神々しさ、全てが16年という空白を無きものにしてしまっていました。
そんな彼等はまるで、何十年かに一度、訪れる彗星の様。
観る人が観れば、待ち焦がれた瞬間だったのでしょう。僕はというと、前にも書きましたが、 ”まだ観られるチャンスがあるバンド” として全く認識していなかったので、目の前で繰り広げられる光景が不思議でなりませんでした。
寡作なバンドというのは、発表された曲全てが代表曲と言っても過言では無い程。どの曲を持ってこられても、本当に心から参ってしまいます。この凄まじい音量で聴く「To Here Knows When」や「Blown A Wish」の、何と素晴らしい事か。
「Slow」を挟み、予想に反しもう来てしまった「Soon」。幻想的な空気を裂く様にして、一気にキャッチーでダンサンブルな曲が始まり、歓声が上がります。まばゆい光の方へ、一斉に手を差し伸べるオーディエンス。この世界の縮図がここに出来上がっていました。
そして、「Feed Me With Your Kiss」、「Sueisfine」と休む暇も与えられず、「You Made Me Realise」へ。彼等のライブは、始まった時から全てがクライマックスの様なもの。そして更にこうして、惜しげも無くアルバムに収録されていない初期の名曲を、ジグソーパズルの最後のピースをはめる様にして持ってくるところが、意外と人間らしくてまた泣けます。
誰の顔にも優しい笑みが訪れたこの曲でしたが、終わると今度はそのまま各楽器が一斉にノイズを吐き出し始めました。そして、それが延々と続きます。インプロヴィゼーションでもジャムでも何でも無い、正真正銘のノイズ。
顔をしかめ、一斉に耳を塞ぎ始めるオーディエンス。やがて激しいストロボと、瞼の裏の残像に似た中毒性のある映像。
僕はあまりの美しさに、耳を塞ぐこともせずただ、ステージに観入っていました。ここだけではありません。ライブが始まってからここに至るまで、一瞬たりとも目を離す隙など与えてはくれませんでした。視覚、聴覚、全てがこれ程に美しいバンドを、今まで観た事があったでしょうか。
目と耳が侵されていく、この心地良さ。前衛的なアーティスト達がNoiseという音楽に辿り着いた理由が少し分かった気がしました。これは恐らく、胎内の音なのでは。人は、胎内に帰ろうとしているのでは。
途方も無い一枚岩の様なノイズでした。Noiseアーティストのライブでさえ、もう少し展開はあるものですが。
結局、ノイズは30分程も続きました。
丁度、彗星の尾にあたる部分だったのでしょうか。
登場してから退場するまで、MCは一切無し。MCどころか、誰もオーディエンスを意識してなんかいません。PIXIESやTHE MARS VOLTAもそうでした。
Fuji Rock Festival 2008に行く人は、何と幸運なことでしょうか。
90年代初頭を生きた人達にトラウマを与え、消えた、MY BLOODY VALENTINE。
彗星は巡るだけで、新しいものを携えてはいません。
あとは、取り残された僕達が、フォトンにまみれながら進化するなり退化するなり、何か別の生物と化してしまえれば。
あがなえないもの、ここに。
Setlist:
01. I Only Said
02. When You Sleep
03. (When You Wake) You’re Still In A Dream
04. You Never Should
05. Lose My Breath
06. Come In Alone
07. Only Shallow
08. Thorn
09. Nothing Much To Lose
10. To Here Knows When
11. Blown A Wish
12. Slow
13. Soon
14. Feed Me With Your Kiss
15. Sueisfine
16. You Made Me Realise
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残念です。
でも、そういうもんなんでしょう。
下の記事に書くべきなんでしょうが、
Radiohead はこれで6回ですっけ?
日本で10回かな?
そんぐらい行って全部聴いて集めてまわりたい曲だらけなので羨ましい限りです。
僕の2日間には何が来るのかしら。
ショーケース的なセットだと残念なのでそれは東京でやって・・・と勝手に思っています。
君の不在中に6回ぐらい電話をかけかけました。
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オレ
名古屋はやっと?ついに?(名古屋の)夏らしくなってきました。帰ってきたら、溶けるよ。
おかしいな、着信履歴には残っていないみたい。
RADIOHEADは今回のU.K.ツアーを観終えて5回だね。お金を使う所と、使わない所の差が激しくて、中間が無いのがこの人生の特徴かな。それでうまく回っているから不思議。
「In Rainbows」の曲、ライブで聴くとかなり良いよ。取り敢えずそれを一番先に伝えたい。
>Vermeer軍曹
MY BLOODY VALENTINE。是非とも最初から最後まで観てくださいね。どう考えても今年のベストアクトは彼等になるでしょう。
>Masahikoさん
まだ少しいますよ。離れる事を考えると鬱になります。
行きに立ち寄った香港の暑さは半端無かったです。名古屋の夏・・・。無駄に暑くて不毛だなあ。